転職者の方から「コンサルティングファームではどのような役職があるのか」といった質問を受けることがあります。
コンサルティングファームには部長や課長といった役職ではなく、パートナー、マネージャー、コンサルタント、アソシエイト、アナリストといったタイトル(職位)があります。マネージャーこそ最近では耳にしますが、他のタイトルは耳慣れないこともあり、なかなかイメージがつきづらいかと思います。
今回は、コンサルティングファームにおける代表的なタイトルと、その役割について簡単にまとめさせていただきます。ただし、ファームによってタイトルの名称や役割などが異なる場合がありますので、その点はご理解ください。

コンサルのタイトルとそれぞれの役割
職位についてお伝えする前に、まずはコンサルタント(職位のコンサルタントではなく、職種としてのコンサルタント)の仕事について大まかにご説明します。
コンサルタントの仕事は大きく、デリバリーとセールスに分かれます。デリバリーとは、プロジェクト(案件ということもあります)の遂行であり、多くの方が想像するコンサルタントの仕事はデリバリーかと思います。また、セールスとは、プロジェクトを受注するための提案活動を指しますが、一般的な営業とは大きく異なります。こちらについては後程詳しくご説明します。
パートナーに近づくにつれて仕事内容がデリバリー中心からセールス中心になっていきます。
それでは、ここからは各タイトルの役割について説明していきます。
パートナー
パートナーはファームの最高職位であり、プロジェクトの責任者です。複数のプロジェクトをまとめ上げ、クライアントの役員レベルへセールス(提案活動)を行い、案件を受注する役割を担います。また、ファームの方向性や人材育成の方針を他のパートナーと話し合い、ファームを経営していく役割もあります。
パートナーになるには、数億円規模の売上を一定年数維持することが求められます。また、クライアントのニーズが多様化し、業界や領域横断での課題が増えているため、パートナーともなるとソリューションについては戦略・業務・ITのうち2つ、業界(インダストリー)についても2つ以上専門としている方がほとんどです。例えば、金融とエネルギー業界において、業務とITの両方に専門性を持つといった具合です。
ちなみに、ソリューションやインダストリーを広げるタイミングとしては、社内でのチーム異動のときもありますが、転職により別のファームに移るときの方が多い傾向にあります。
マネージャー
プロジェクトの現場責任者ともいえるのがマネージャーです。セールス段階からプロジェクトに入ることが多く、プロジェクト初期の課題の構造化、仮説構築、作業設計を中心となって行い、プロジェクトの方向性を定めたうえでメンバーに仕事や役割を割り振ります。
その後の仮説検証や意味合い出しなどは、コンサルタントやアソシエイト/アナリストが中心となって行いますが、その過程でもマネージャーが随時判断を下しながらプロジェクトが進みます。
また、プロジェクト全体の管理や人員・コスト管理、現場レベルのクライアントとの折衝も行い、次の案件の獲得に向けての準備も進めます。
加えて、マネージャーには、クライアントとのコミュニケーション内容を整理したうえでパートナーに相談し、プロジェクトを正しい方向へ牽引していくことが求められます。プロジェクトが誤った方向に進んだ場合には、手戻りが多く発生し、最悪の場合にはプロジェクトが炎上してしまします。
このように、マネージャーには、コンサルタントとしての高い能力に加えて、高いマネジメント能力やコミュニケーション能力が求めます。そのため、アソシエイト/アナリストからコンサルタントへの昇進に比べて、コンサルタントからマネージャーへの昇進は容易ではありません。
コンサルタント
多くの方が「コンサルタント」としてイメージしている業務を行う職位がコンサルタントです。
プロジェクトの実務部分をチームの中核として担い、アソシエイトやアナリストが収集した情報や分析したデータからマネージャーと相談しつつプロジェクトの方向性を修正しながら推進します。
コンサルタントは自分の業務を卒なくこなし、レベルアップしていくことが求められる一方で、アソシエイトやアナリストを部下として持つ立場でもあります。部下であるアソシエイトやアナリストのアウトプットの質が低い場合には、コンサルタントがマネージャーから追及されることになるため、そういう意味でも困難を感じる方が多い職位です。
なお、事業会社での社会人経験5年程度で転職された方は、コンサルタントの職位から始まることが多いです。また、ファームや個人の能力によって差はありますが、アソシエイト/アナリストからは、2~3年程度でコンサルタントに昇進します。
アソシエイト/アナリスト
アソシエイトやアナリストは簡単にいうと、「コンサル見習い」です。
議事録や資料の作成、情報収集やデータ分析など、プロジェクトにおいて実際に手を動かす仕事を担います。仕事内容を見ると作業が中心のように思えますが、実際はアソシエイトやアナリストに対してもチームの一員として、能動的な行動やバリューの発揮が求められます。例えば、チームの会議で発言をしなければ、「君は何のためにそこにいるのか?」と厳しい言葉を投げかけられることもあります。
また、アソシエイトやアナリストの収集した情報や分析したデータを用いてコンサルタントやマネージャーがプロジェクトを進めていきますので、その意味でも大変重要な役割です。ただ情報収集や分析を行うのではなく、マネージャーなどがどのように活用するのかを考えたアウトプットが出来るとより良いとされる傾向にあります。
なお、上記に挙げた職位のほかにも、ファームによっては、コンサルタントと、マネージャーの間にシニアコンサルタントと呼ばれる職位があったり、マネージャーとパートナーとの間に、シニアマネージャー、プリンシパル、ディレクター、といった職位があることがあります。
コンサルティングファームのセールス(提案活動)
コンサルタントの仕事としては、主にプロジェクトでの仕事をイメージされると思いますが、コンサルティングファームにおける営業活動であるセールスも、職位が上がるにつれて業務の割合を大きく占めるようにになります。
セールスは、パートナーが描いたストーリーラインに、マネージャーがメッセージやコンテンツをいれて資料として仕上げ、クライアントに提案をするという流れで行われます。
また、セールスは、クライアントが新規か既存か、プロジェクトか新規か既存かによって、「新規クライアント・新規プロジェクト」「既存クライアント・新規プロジェクト」「既存クライアント・既存プロジェクト」の大きく3つに分かれます。
新規クライアント・新規プロジェクト
「新規クライアント・新規プロジェクト」は、取引のないクライアントにおける、初めてプロジェクトを獲得するためのセールスです。
「新規クライアント・新規プロジェクト」のセールスはパートナーによって大きくスタイルが変わります。専門性を活かした講演会やセミナーを主宰し企業とつながるパターン、既存クライアントから紹介をうけるパターン、コールドコールで突破するパターンなど、実に様々です。いずれの場合も、まずは小さな案件を獲得し、その案件を成功させることで、案件を段々大きくしていきます。
「新規クライアント・新規プロジェクト」の獲得は大変難易度が高いセールスですので、これが得意なパートナーは社内でも高い評価を受けます。
既存クライアント・新規プロジェクト
「既存クライアント・新規プロジェクト」は取引実績のあるクライアントにおける、初めてのプロジェクトを獲得するためのセールスです。
すでに取引実績があるとはいえ、既存プロジェクトがどれだけクライアントを満足させられているかが非常に重要です。
私の知っている例を一つ挙げると、大手生命保険会社において、「新規・新規」で新規出店におけるリードから成約までの相関データ分析の案件を獲得し、そのプロジェクトを成功させ、他のファームが担っていた新規出店戦略プロジェクトを「既存・新規」で獲得したといったことがあります。
既存クライアント・既存プロジェクト
「既存クライアント・既存プロジェクト」は取引実績のあるクライアントにおける、プロジェクトの継続を実現するためのセールスです。
マネージャーとして初めてセールスを行う場合には、この「既存クライアント・既存プロジェクト」から始める場合が多く、セールスのスタート地点ともいえるものです。そのため、マネージャーが中心となって提案を行うことが多く、プロジェクトを遂行しつつも、提案の準備を進める必要があります。
今回の記事では、大まかにコンサルティングファームにおける職位や、セールスについてお伝えしました。これからコンサルタントを目指す方にとっても、すでにコンサルタントでいらっしゃる方にとっても、今後のキャリアのイメージを醸成する助けになっていれば嬉しいです。
また、この機会がキャリア形成の一助となれば幸いです。